定理証明済み
行列式による正則性の判定条件
内容
正方行列 A が正則であるのは det(A)=0 のとき、かつそのときに限る。正則であるとき、A−1=det(A)1adj(A) が成り立つ。ここで adj(A) は余因子行列(余因子からなる行列の転置)である。
なぜ正しいのか?
線形写像が「元に戻せる」のは、空間をより低い次元に押しつぶさない場合に限られる——行列式はまさに「体積をゼロに押しつぶすかどうか」という問いを測るものなので、正則性と det=0 は、実は 2 つの角度から見た同じ主張である:一つは代数的な角度(逆行列が存在するか)、もう一つは幾何学的な角度(体積スケーリング係数がゼロでないか)。
証明の概略
(⇒)A が正則であると仮定すると、AA−1=I を満たす行列 A−1 が存在する。上で証明した乗法性の定理を適用すると、det(A)det(A−1)=det(AA−1)=det(I)=1 となる。det(A) と det(A−1) という 2 つの数の積が 1 に等しいので、どちらも 0 にはなり得ない——よって det(A)=0 である。
(⇐)、2×2 で具体的に示す:A=(acbd) が det(A)=ad−bc=0 を満たすとする。adj(A)=(d−c−ba) と定義する。直接計算すると、A⋅adj(A)=(acbd)(d−c−ba)=(ad−bccd−cd−ab+ab−cb+ad)=(ad−bc00ad−bc)=det(A)I となり、これはちょうど等式 A⋅adj(A)=det(A)I である。逆の順序で同じ計算をすると adj(A)⋅A=det(A)I も得られる。
det(A)=0 なので、A⋅adj(A)=det(A)I の両辺をスカラー det(A) で割ると A⋅det(A)adj(A)=I となり、同様に逆の順序から det(A)adj(A)⋅A=I が得られる。これにより明示的な両側逆行列 A−1=det(A)1adj(A) が示され、A は正則である。
一般の n の場合(n=3 で例示)、同じ議論が成り立つ。ラプラスの余因子展開により、∑jaijCij=det(A)(第 i 行に沿った展開)であり、i=k のとき ∑jaijCkj=0 となる(この和は、第 i 行を第 k 行にコピーした行列の余因子展開であり、2 つの行が等しいため上の表により行列式が 0 になる)。これらの行ごとの等式を行列の形にまとめると、任意の n について、ちょうど A⋅adj(A)=det(A)I が得られる。したがって det(A)=0 である限り、2×2 の場合と同じ除算の議論により A−1=adj(A)/det(A) が得られる。逆に det(A)=0 の場合、第一段落の対偏を用いれば正則性は完全に排除される。なぜなら det(A)det(A−1)=1 は det(A)=0 を要求するからである。これにより判定条件が両方向で証明される。
ステップごとの証明
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