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数理物理学

天体力学:二体問題と三体問題

ニュートンの万有引力の法則が、互いに公転する二天体の運動をひとつの円錐曲線軌道に帰着させる仕組み、惑星が等しい時間に等しい面積を掃く理由、そして第三の天体を加えるとその整った描像が崩れカオスへの扉が開く理由を扱う。

直観互いに落ち込み合う二つの天体

ボールを落とせばまっすぐ下に落ちる。十分速く横向きに投げても、やはり落ちる――しかし地面もちょうど同じ速さで下に湾曲していくため、決して着地しない。これはまさに月が地球の周りで、また地球が太陽の周りで行っていることである。すなわち重力による絶え間ない落下と、中心天体を常にかわし続けるだけの速い横方向の運動である。天体力学とは、恒星を巡る一惑星から重力だけを頼りに複数の天体をすり抜けていく探査機に至るまで、天体がどのように互いの周りを落下していくかを正確に記述する数学である。

角度シータのスライダー付きインタラクティブ単位円。軌道上の天体の位置を示す極角(真近点角)の直感的モデルとして用いる。
θ\thetaをドラッグしてみよう:円上の点を示すのと同じ極角が、軌道上の惑星の位置も示す。円ではθ\thetaが回転してもrrは一定だが、実際の軌道ではr(θ)=p1+ecos⁡θ,p=h2GMr(\theta) = \dfrac{p}{1+e\cos\theta},\qquad p = \dfrac{h^{2}}{GM}によりrr自体が近点(θ=0\theta=0)と遠点(θ=180∘\theta=180^\circ)の間で変化する。

中高ケプラーが観測したこと

ティコ・ブラーエによる数十年分の肉眼観測データのみに基づき、微積分を一切使わずに、ヨハネス・ケプラーは1609年から1619年ごろに三つの純粋に経験的な法則を発表した:(1)惑星は太陽を中心ではなく一つの焦点とする楕円上を運動する、(2)太陽と惑星を結ぶ線分は等しい時間に等しい面積を掃く、そのため惑星は太陽に近いほど速く、遠いほど遅く動く、(3)惑星の公転周期の二乗は軌道長半径の三乗に比例する。ケプラー自身はその理由を説明できなかった――それにはおよそ七十年後のニュートンの重力法則と微積分の登場を待たねばならなかった。本稿の残りでは、その単一の逆二乗法則からこれら三法則すべて、そしてそれ以上を証明する。

大学二体を一体に帰着させる

定義: 換算質量と相対位置

重力のみで互いに引き合う二つの質点m1m_1, m2m_2について、物体2から物体1へのベクトルをr=r1−r2\mathbf r = \mathbf r_1 - \mathbf r_2、総質量をM=m1+m2M = m_1 + m_2、換算質量をμ=m1m2m1+m2\mu = \dfrac{m_1 m_2}{m_1+m_2}とする。重心系では、真の二体問題は原点に置かれた質量MMが作る固定された逆二乗場の中を運動する単一の仮想粒子(質量μ\mu)の問題と厳密に等価である――相対ベクトルr\mathbf rがこの仮想粒子の軌道を描き、実際の位置r1,r2\mathbf r_1,\mathbf r_2はr\mathbf rから単純な質量比によるスケーリングで復元できる。

r¨=−GMr3r\ddot{\mathbf r} = -\dfrac{GM}{r^{3}}\mathbf r

ここでGGはニュートンの重力定数、M=m1+m2M=m_1+m_2、r\mathbf rは相対離隔ベクトル、r=∣r∣r=|\mathbf r|は両天体間の距離である。換算質量μ\muがこの式から完全に消えていることに注意しよう:軽くても重くても、自由落下するあらゆる物体は同じ初期条件のもとで同じ相対軌道を描く――これはガリレオが観測した「すべての物体は同じ速さで落下する」という事実の直接の帰結である。

h=r×r˙\mathbf h = \mathbf r \times \dot{\mathbf r}

ベクトルh=r×r˙\mathbf h = \mathbf r \times \dot{\mathbf r}は比角運動量(換算質量あたりの角運動量)である。重力は中心力であり——r¨\ddot{\mathbf r}は常にr\mathbf rに沿って向く——原点まわりのトルクはゼロになるため、h\mathbf hは保存量の自然な候補となる。以下の定理1でこれを厳密に証明し、この一事実だけで軌道が固定された平面内に収まり、一定の割合で面積を掃くことが導かれる。

発展軌道の形:ビネの方程式と円錐曲線

軌道の形を求めるため、軌道面内で極座標(r,θ)(r,\theta)を用い、u=1/ru=1/rと置換する。h=r2θ˙h = r^{2}\dot\thetaよりθ˙=hu2\dot\theta=hu^2なので、連鎖律によりr˙=drdθθ˙=d(1/u)dθ hu2=−hdudθ\dot r = \dfrac{dr}{d\theta}\dot\theta = \dfrac{d(1/u)}{d\theta}\,hu^{2} = -h\dfrac{du}{d\theta}となり、さらに微分するとr¨=−hd2udθ2θ˙=−h2u2d2udθ2\ddot r = -h\dfrac{d^{2}u}{d\theta^{2}}\dot\theta = -h^{2}u^{2}\dfrac{d^{2}u}{d\theta^{2}}を得る。

d2udθ2+u=GMh2,u=1r\dfrac{d^{2}u}{d\theta^{2}} + u = \dfrac{GM}{h^{2}},\qquad u = \dfrac1r

r¨\ddot rとθ˙=hu2\dot\theta=hu^2を動径方向の運動方程式r¨−rθ˙2=−GMu2\ddot r - r\dot\theta^{2} = -GMu^{2}に代入し−h2u2-h^{2}u^{2}で割ると、まさに上のビネの軌道方程式が得られる――これはu(θ)u(\theta)に関する線形定数係数常微分方程式である。一般解はu(θ)=GMh2+Ccos⁡(θ−θ0)u(\theta) = \dfrac{GM}{h^{2}} + C\cos(\theta-\theta_0)であり、θ0=0\theta_0=0(近点方向)を選び積分定数をC=GMh2eC=\dfrac{GM}{h^{2}}eと書けばr(θ)=p1+ecos⁡θ,p=h2GMr(\theta) = \dfrac{p}{1+e\cos\theta},\qquad p = \dfrac{h^{2}}{GM}が得られる――これは引力源を中心ではなく焦点に持つ円錐曲線の極方程式である。eeの値により、0≤e<10\le e<1なら楕円(束縛軌道、e=0e=0は円)、e=1e=1なら放物線、e>1e>1なら双曲線となる。

離心率による円錐曲線の分類
離心率軌道の種類比エネルギー例
0≤e<10 \le e < 1楕円(e=0e=0なら円)負(束縛)太陽を巡る地球、e≈0.017e\approx0.017
e=1e = 1放物線ちょうどゼロ境界的な長周期彗星
e>1e > 1双曲線正(非束縛)恒星間天体オウムアムア

軌道方程式は形状を示すが、エネルギーと角運動量だけでは近点の方向が明らかに定まるわけではない。驚くべきことに、ニュートン重力にはもう一つの保存ベクトルが隠されている:ラプラス・ルンゲ・レンツベクトルA=r˙×h−GMr^\mathbf A = \dot{\mathbf r}\times\mathbf h - GM\hat{\mathbf r}(ここでr^=r/r\hat{\mathbf r}=\mathbf r/r)である。以下の定理3でA\mathbf Aが一定であること、および∣A∣=GMe|\mathbf A| = GMeとなり焦点から近点へまっすぐ向くことを示す――これは逆二乗力に特有の「隠れた」対称性であり(中心力の中では調和振動子とのみ共有される)、ケプラー問題に内在する四次元回転対称性を反映している。

大学三つの古典的結果の証明

任意の中心力(常にr\mathbf r方向を向く力)の下で、力の中心から運動体へ向かう動径ベクトルは、一定の割合dAdt=12r2θ˙=h2\dfrac{dA}{dt} = \dfrac12 r^{2}\dot\theta = \dfrac{h}{2}で面積を掃く。

なぜ正しいのか?

これはケプラーの第二法則であり、以下の証明が示すように、重力特有の逆二乗という形とは無関係である――力が中心力(位置ベクトルに平行)であることだけから従うため、重力であるかどうかにかかわらず、あらゆる中心力に等しく成り立つ。

証明

h=r×r˙\mathbf h = \mathbf r\times\dot{\mathbf r}と定義する。微分するとh˙=r˙×r˙+r×r¨=0+r×r¨\dot{\mathbf h} = \dot{\mathbf r}\times\dot{\mathbf r} + \mathbf r\times\ddot{\mathbf r} = \mathbf 0 + \mathbf r\times\ddot{\mathbf r}(第一項は同一ベクトル同士の外積なので常にゼロ)。中心力の下ではr¨\ddot{\mathbf r}はr\mathbf rに平行であり、あるスカラー関数ffを用いてr¨=f(r)r^\ddot{\mathbf r} = f(r)\hat{\mathbf r}と書けるので、r×r¨=f(r) r×r^=0\mathbf r\times\ddot{\mathbf r} = f(r)\,\mathbf r\times\hat{\mathbf r} = \mathbf 0も成り立つ。よってh˙=r×r¨=−GMr3(r×r)=0\dot{\mathbf h} = \mathbf r\times\ddot{\mathbf r} = -\dfrac{GM}{r^{3}}(\mathbf r\times\mathbf r) = \mathbf 0となり、h\mathbf hは大きさも向きも一定な固定ベクトルである。

h\mathbf hの向きが一定で、h=r×r˙\mathbf h = \mathbf r\times\dot{\mathbf r}は常にr\mathbf rに垂直であるから、位置ベクトルr\mathbf rはh\mathbf hに垂直な一つの固定平面内に永久に閉じ込められる――運動は平面的である。その平面内に極座標(r,θ)(r,\theta)を設定する。r=rr^\mathbf r = r\hat{\mathbf r}、r˙=r˙r^+rθ˙θ^\dot{\mathbf r} = \dot r\hat{\mathbf r} + r\dot\theta\hat{\boldsymbol\theta}と書くと、外積はh=rr^×(r˙r^+rθ˙θ^)=r2θ˙ z^\mathbf h = r\hat{\mathbf r}\times(\dot r\hat{\mathbf r}+r\dot\theta\hat{\boldsymbol\theta}) = r^{2}\dot\theta\,\hat{\mathbf z}を与えるので、スカラーh=r2θ˙h=r^{2}\dot\theta自体が一定となる。

微小時間dtdtの間に、動径ベクトルはほぼ三角形の薄い扇形を掃き、その面積はdA=12r⋅(r dθ)=12r2 dθdA = \tfrac12 r\cdot(r\,d\theta) = \tfrac12 r^{2}\,d\thetaである(底辺r dθr\,d\theta、高さrr、三角形の係数12\tfrac12)。dtdtで割るとちょうどdAdt=12r2θ˙=h2\dfrac{dA}{dt} = \dfrac12 r^{2}\dot\theta = \dfrac{h}{2}が得られる。hhが一定であるから面積掃引率dA/dtdA/dtは常に一定である――等しい時間に等しい面積が掃かれ、ケプラーの第二法則が証明された。■\blacksquare

総質量MMを周る半長軸aaの束縛軌道(楕円)について、公転周期TTはT2=4π2GMa3T^{2} = \dfrac{4\pi^{2}}{GM}a^{3}を満たす。

なぜ正しいのか?

これは軌道の大きさを、離心率に依存することなく、公転にかかる時間へ直接結びつける事実であり、天文学者がより小さな天体の公転周期を測って恒星や惑星の質量を「秤にかける」たびに用いられる。

証明

定理1により面積掃引率dA/dt=h/2dA/dt=h/2は一定であるから、一公転周期TTにわたって積分すると全面積A=h2TA = \tfrac{h}{2}Tを得る。半長軸aa、半短軸bbの楕円については幾何学的にA=πabA=\pi abである。両者を等置するとA=πab=h2TA = \pi a b = \dfrac{h}{2}Tとなる。

次に、ビネの方程式を通じてhhを形状と結びつける:軌道の半通径はp=h2/GMp=h^{2}/GMであり、楕円については標準的な関係式b=a1−e2b=a\sqrt{1-e^{2}}およびp=a(1−e2)=b2/ap=a(1-e^{2})=b^{2}/aが成り立つ。p=h2/GMp=h^{2}/GMとp=b2/ap=b^{2}/aを組み合わせるとh2=GMb2ah^{2}=\dfrac{GMb^{2}}{a}、すなわちh=GMb2a=bGMah = \sqrt{\dfrac{GMb^{2}}{a}} = b\sqrt{\dfrac{GM}{a}}を得る。

このhhの式をπab=h2T\pi ab=\tfrac{h}{2}Tに代入しTTについて解くと、T=2πabh=2πabbGM/a=2πaaGM=2πa3GMT=\dfrac{2\pi ab}{h}=\dfrac{2\pi ab}{b\sqrt{GM/a}}=2\pi a\sqrt{\dfrac{a}{GM}}=2\pi\sqrt{\dfrac{a^{3}}{GM}}となる。両辺を二乗するとT2=4π2GMa3T^{2} = \dfrac{4\pi^{2}}{GM}a^{3}が得られ、これがケプラーの第三法則である――eeが完全に消去されているため、離心率eeによらずすべての楕円で成り立つ。■\blacksquare

逆二乗力r¨=−GMr3r\ddot{\mathbf r} = -\dfrac{GM}{r^{3}}\mathbf rのもとでの運動において、ベクトルA=r˙×h−GMr^\mathbf A = \dot{\mathbf r}\times\mathbf h - GM\hat{\mathbf r}は時間的に一定であり、大きさは∣A∣=GMe|\mathbf A| = GMe、向きは焦点から近点へ向かう。

なぜ正しいのか?

エネルギーと角運動量だけではケプラー軌道の大きさと形は決まるが、平面内での向きは決まらない。ラプラス・ルンゲ・レンツベクトルは近点の位置を固定する追加の保存量であり、その存在自体が1/r21/r^2力に特有である――大半の中心力にはこのようなベクトルは存在せず、それがまさに(下記の制限三体問題のように)大半の中心力軌道が固定された閉曲線上に留まらない理由である。

証明

微分するとdAdt=r¨×h+r˙×h˙−GMdr^dt\dfrac{d\mathbf A}{dt} = \ddot{\mathbf r}\times\mathbf h + \dot{\mathbf r}\times\dot{\mathbf h} - GM\dfrac{d\hat{\mathbf r}}{dt}。h\mathbf hは一定(定理1)なので中間項は消える。r¨=−GMr2r^\ddot{\mathbf r}=-\dfrac{GM}{r^{2}}\hat{\mathbf r}とh=r×r˙\mathbf h=\mathbf r\times\dot{\mathbf r}を用い、ベクトル三重積の恒等式r^×(r×r˙)=r(r^⋅r˙)−r˙(r^⋅r)\hat{\mathbf r}\times(\mathbf r\times\dot{\mathbf r}) = \mathbf r(\hat{\mathbf r}\cdot\dot{\mathbf r}) - \dot{\mathbf r}(\hat{\mathbf r}\cdot\mathbf r)よりr¨×h=−GMr2[rr˙ r^−rr˙]=GM(r˙r−r˙rr^)\ddot{\mathbf r}\times\mathbf h = -\dfrac{GM}{r^{2}}\big[r\dot r\,\hat{\mathbf r} - r\dot{\mathbf r}\big] = GM\left(\dfrac{\dot{\mathbf r}}{r} - \dfrac{\dot r}{r}\hat{\mathbf r}\right)を得る。ここでr˙=r^⋅r˙\dot r=\hat{\mathbf r}\cdot\dot{\mathbf r}は距離rrのスカラー変化率(r^⋅r=r\hat{\mathbf r}\cdot\mathbf r=rを使用)。

一方、r^=r/r\hat{\mathbf r}=\mathbf r/rを直接微分するとdr^dt=r˙r−r r˙r2=r˙r−r˙rr^\dfrac{d\hat{\mathbf r}}{dt} = \dfrac{\dot{\mathbf r}}{r} - \dfrac{\mathbf r\,\dot r}{r^{2}} = \dfrac{\dot{\mathbf r}}{r} - \dfrac{\dot r}{r}\hat{\mathbf r}となり、これは上で求めたr¨×h/GM\ddot{\mathbf r}\times\mathbf h/GMの括弧内の式とまったく同じである。よってr¨×h=GMdr^dt\ddot{\mathbf r}\times\mathbf h = GM\dfrac{d\hat{\mathbf r}}{dt}が恒等的に成り立つ。

したがってdAdt=GMdr^dt−GMdr^dt=0\dfrac{d\mathbf A}{dt} = GM\dfrac{d\hat{\mathbf r}}{dt} - GM\dfrac{d\hat{\mathbf r}}{dt} = \mathbf 0となり、A\mathbf Aが一定であることが証明された。近点(そこではr˙\dot{\mathbf r}はr^\hat{\mathbf r}に垂直な純接線方向で速さvp=h/rpv_p=h/r_p)でA\mathbf Aを評価すると、r˙×h\dot{\mathbf r}\times\mathbf hは大きさh2/rph^{2}/r_pで−r^-\hat{\mathbf r}方向を向くためA=(h2rp−GM)r^\mathbf A = \left(\dfrac{h^{2}}{r_p}-GM\right)\hat{\mathbf r}となり、軌道方程式からrp=p/(1+e)=h2GM(1+e)r_p=p/(1+e)=\dfrac{h^{2}}{GM(1+e)}を用いるとA=GMe r^p\mathbf A = GMe\,\hat{\mathbf r}_pとなって、∣A∣=GMe|\mathbf A|=GMeが近点方向を正しく向くことが確認できる。■\blacksquare

発展二体を超えて:制限三体問題

質量が無視できる第三の天体(探査機や小惑星)を、円軌道で互いを周る二つの大質量M1,M2M_1,M_2の重力の下で運動させることを考える。両大質量の公転角速度ω\omegaで回転する基準系では、小天体の運動は重力に加え、回転系に特有の見かけの遠心力とコリオリ力に支配され、それらは以下の有効ポテンシャルにまとめられる。

Ω(x,y)=−GM1r1−GM2r2−12ω2(x2+y2)\Omega(x,y) = -\dfrac{GM_1}{r_1} - \dfrac{GM_2}{r_2} - \dfrac12\omega^{2}(x^{2}+y^{2})

定義: 五つのラグランジュ点

有効力(Ω\Omegaの勾配、回転系で静止する物体へのコリオリ項を含む)がゼロになる五つの点がラグランジュ点である。L1L_1は二質量の間に位置し、L2L_2は小さい方の質量のすぐ外側、M1M_1から見て遠い側に位置し、L3L_3はM2M_2から見てM1M_1の反対側に位置する。m2≪M1m_2\ll M_1の場合(例えば太陽を巡る地球)、L1L_1とL2L_2はどちらも小さい方の質量からおよそr≈a(m23M1)1/3r \approx a\left(\dfrac{m_2}{3M_1}\right)^{1/3}の距離にあり、ここでaaは公転間隔である。L4L_4とL5L_5はM1M_1、M2M_2とともに正三角形をなし、小さい方の質量より60∘60^{\circ}先行・後行する。

L1L_1、L2L_2、L3L_3は常に動力学的に不安定である(Ω\Omegaの鞍点)――そこに置かれた物体は軌道維持なしには漂い去ってしまう。L4L_4とL5L_5はΩ\Omega自体の鞍点であるにもかかわらず、コリオリ力を含めると、質量比がラウスの判定基準μ=m2m1+m2<0.03852\mu = \dfrac{m_2}{m_1+m_2} < 0.03852を満たす限り、真に安定となる。太陽・木星系はこれを十分に満たしており、それゆえ木星のL4L_4とL5L_5には数千個のトロヤ群小惑星が留まっており、ラグランジュが数学的にその存在を予言してから一世紀以上を経た1906年に初めて発見された。

二体問題とは異なり、一般的な三体問題にはそれに類する閉じた形の解は存在しない。古典的な十個の保存量(エネルギー、線運動量と角運動量それぞれ三成分、および重心の等速運動)を超えて、アンリ・ポアンカレは1890年、スウェーデン国王オスカル二世の懸賞に応じた論文の中で、一般には他に一価解析的な運動の積分は存在しないことを証明した――上記のラプラス・ルンゲ・レンツベクトルのように二体問題を厳密に可解にしていた追加の「隠れた」保存則は、第三の天体を加えると単純に失われてしまう。その結果、軌道は初期条件に極めて敏感に依存し得るため、根底の方程式が完全に決定論的であるにもかかわらず、長期予測は実質的に不可能となる。太陽系の安定性を解決しようとしたポアンカレのこの試みから生まれた発見は、一般にカオス理論の誕生とみなされている。

大学実世界での応用と具体例

ミッション設計者は、上で証明したまさに二体問題の構成要素を継ぎ合わせることで実際の探査機を飛ばしている。ホーマン遷移は定理3の軌道形状の結果を用いて、二つの円軌道間で最も安上がりな遷移楕円を選ぶ。ラグランジュ点に留まる望遠鏡は、上の理論を用いてほとんど燃料を使わずにその場(小さな「ハロー」軌道)に留まる。重力アシストのフライバイは、フライバイする惑星自身の系から見れば、その遭遇が単なる弾性的な二体散乱事象にすぎないという事実を利用する――基準系を変えることだけが探査機のエネルギーを変える。

例: 火星へのホーマン遷移

地球の軌道はaE=1 AUa_E=1\text{ AU}、火星の軌道はaM=1.524 AUa_M=1.524\text{ AU}である(共にほぼ円軌道で同一平面上)。T[yr]2=a[AU]3T[\text{yr}]^{2} = a[\text{AU}]^{3}(太陽質量を単位に組み込んだケプラーの第三法則)を用い、地球から火星へのホーマン遷移軌道の片道遷移時間を求めよ。

解答

遷移楕円は両方の円軌道に接しなければならないため、その半長軸はat=aE+aM2=1+1.5242=1.262 AUa_t = \dfrac{a_E+a_M}{2} = \dfrac{1+1.524}{2} = 1.262\text{ AU}である(遷移軌道の近日点が地球軌道、遠日点が火星軌道)。

T[yr]2=a[AU]3T[\text{yr}]^{2} = a[\text{AU}]^{3}を遷移軌道に適用すると、その全周期はTt=at3/2 yr=1.2621.5 yr≈1.418 yrT_t = a_t^{3/2}\text{ yr} = 1.262^{1.5}\text{ yr} \approx 1.418\text{ yr}となる。

片道の飛行はこの楕円の半分、近日点から遠日点までにすぎないため、遷移時間はTt/2≈0.709 yr≈259T_t/2 \approx 0.709\text{ yr} \approx 259日となる――これは実際の火星探査機がこの最小エネルギーのホーマン軌道に近い経路を飛行する際に用いる、おおよそ7〜9か月の巡航時間に驚くほど近い。

例: 木星での重力アシスト・フライバイ

ある探査機が木星(太陽中心速度vJ=13.1 km/sv_J=13.1\text{ km/s})の後方側軌道でフライバイし、偏向角が非常に大きい理想的極限では惑星からの弾性的な「跳ね返り」でよく近似できる:vout=2vJ−vinv_{\text{out}} = 2v_J - v_{\text{in}}。探査機が木星の運動と同じ向きに太陽中心速度vin=10.0 km/sv_{\text{in}}=10.0\text{ km/s}で到着する場合、出発速度voutv_{\text{out}}を求め、余分なエネルギーがどこから来るか説明せよ。

解答

木星自身の(ほぼ慣性的な)静止系では、探査機と惑星重力との遭遇は純粋な中心力散乱事象である:その系でのエネルギー保存により、木星に対する探査機の速さはフライバイのはるか前とはるか後で同じであり、変化するのは偏向角による向きだけである。偏向が最大となる理想化された後方側の配置では、その相対速度はちょうど向きを反転する。

木星の速度vJv_Jを加えて太陽系に戻すと、相対速度u=vin−vJu=v_{\text{in}}-v_Jの完全な反転はvout=−u+vJ=2vJ−vinv_{\text{out}} = -u+v_J = 2v_J-v_{\text{in}}となり、まさに与えられた式となる。数値を代入するとvout=2(13.1)−10.0=16.2 km/sv_{\text{out}} = 2(13.1)-10.0 = 16.2\text{ km/s}、増加量はΔv=6.2 km/s\Delta v = 6.2\text{ km/s}である。

このエネルギーは無から生まれたものではない:太陽系から見ると、木星自身の公転速度はごくわずかに(木星は探査機のおよそ6×10266\times10^{26}倍も重いため、運動量保存によって交換は均等に分配されるが木星側の速度変化はまったく無視できるほど小さい)減少している――探査機は事実上、木星の莫大な公転運動エネルギーのごく一部を「借りた」のである。実際のフライバイでは理想化された完全な180∘180^{\circ}反転が達成されることはなく、実際の増加量はこの最大値の一部にとどまり、前方側のフライバイ(惑星の後ろではなく前に到達する場合)はちょうど逆の効果を生み、探査機を減速させる。

半長軸aa、離心率eeの楕円で、引力源が焦点にあるとき、近点(最も近い)距離はいくらか。

半長軸a=4 AUa=4\text{ AU}で太陽を公転する小惑星がある。T[yr]2=a[AU]3T[\text{yr}]^{2} = a[\text{AU}]^{3}を用いると、その公転周期に最も近い値は:

質量比がラウスの判定基準μ=m2m1+m2<0.03852\mu = \dfrac{m_2}{m_1+m_2} < 0.03852を満たすとき、線形安定になり得る(木星のトロヤ群小惑星のような天体を捕捉できる)ラグランジュ点のペアはどれか。

なぜジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、ハッブルのように地球を直接周回するのではなく、太陽・地球系のL2L_2点まわりのハロー軌道に配置されているのか。

参考文献

  1. Carl D. Murray, Stanley F. Dermott (1999). Solar System Dynamics
  2. Alain Chenciner, Richard Montgomery (2000). A remarkable periodic solution of the three-body problem in the case of equal masses
  3. NASA Science (2024). Webb's Orbit at Sun-Earth Lagrange Point 2 (L2)
  4. NASA Science (2024). Basics of Spaceflight: A Gravity Assist Primer