解析学
べき級数とテイラー級数
eˣ = 1+x+x²/2!+… のように、関数を局所的に多項式風の無限和で表す級数。
直観終わらない多項式
平方根や指数関数、正弦関数のように直接計算しづらい関数もあるが、多項式の項数を無限に増やせば、ある点の近くでその関数とぴったり一致させることができる。典型例が ex=n=0∑∞n!xn で、十分多くの項を足せば真の指数関数と見分けがつかない値が得られる。
この3次多項式 1+x+2x2+6x3 は x=0 における ex の3次テイラー多項式である。ex のグラフと比べると、x=0 付近ではほぼ重なり、離れるにつれてずれていく。中高関数を無限和として書く
定義: べき級数
中心が c のべき級数とは n=0∑∞an(x−c)n という式であり、an は固定された実係数、x は変数である。これは実質的に「項が無限にある多項式」である。
n=0∑∞an(x−c)n=a0+a1(x−c)+a2(x−c)2+⋯ べき級数はすべての x で収束するわけではない。常に c を中心とするある区間——収束区間——で収束し、その半分の長さが収束半径 R である。x がこの区間の内側にあれば無限和は有限の値になり、x が外側にあれば各項が爆発して和は意味をなさない。
an=n!f(n)(c),f(x)=n=0∑∞n!f(n)(c)(x−c)n R との位置関係による挙動| 位置 | 挙動 |
|---|
| ∣x−c∣<R | 絶対収束 |
| ∣x−c∣>R | 発散 |
| ∣x−c∣=R | 端点は個別に確認が必要 |
大学定理:収束半径と項別微分
べき級数 n=0∑∞an(x−c)n において、L=n→∞limanan+1 が(有限値または +∞ として)存在すると仮定する。このとき収束半径は R=L1 であり、L=0 なら R=∞、L=∞ なら R=0 と約束する。
なぜ正しいのか?
比判定法は級数の連続する項を等比級数と比較する。連続する項の比の絶対値が最終的に1未満になれば、級数は収束する等比級数のように振る舞い、有限の和になる。
証明
x=c を固定し、数列級数 ∑bn の項 bn=an(x−c)n に比判定法を適用する。次を計算する。
n→∞limbnbn+1=n→∞liman(x−c)nan+1(x−c)n+1=n→∞limanan+1⋅∣x−c∣=L∣x−c∣。
数列級数の比判定法により、L∣x−c∣<1 すなわち ∣x−c∣<1/L のとき ∑bn は絶対収束し、L∣x−c∣>1 すなわち ∣x−c∣>1/L のとき発散する。したがって ∣x−c∣<1/L を満たすすべての x で級数は絶対収束し、∣x−c∣>1/L を満たすすべての x で発散する。
これはまさに収束半径の定義——「∣x−c∣<R のすべてで級数が収束するような最大の R」——に一致する。ゆえに R=1/L。境界の場合、L=0(比が常に0に近づくのですべての x で収束し R=∞)と L=∞(比が x=c に対して発散するので x=c でのみ収束し R=0)も同じ議論から従う。
n=0∑∞an(x−c)n の収束半径が R>0 ならば、f(x)=∑n=0∞an(x−c)n は (c−R, c+R) 上で微分可能であり、その導関数は項別に計算できる:f′(x)=n=1∑∞nan(x−c)n−1。収束半径は同じ R である。
なぜ正しいのか?
べき級数は無限多項式のように振る舞い、多項式は項別に微分できる。この定理は、収束半径の内側に厳密にとどまる限り、この馴染み深い規則が無限個の項に移行しても成り立つことを述べている。
証明
まず、項別微分した級数が同じ収束半径を持つことを示す。cn=nan を項別微分(添字をずらしたもの)の係数とする。n→∞ のとき n1/n→1 なので limsupn∣nan∣1/n=limsupn∣an∣1/n となり、コーシー・アダマールの公式により ∑an(x−c)n と ∑nan(x−c)n−1 は同じ収束半径 R を持つ。
次に、ρ<R を満たす任意の閉区間 [c−ρ,c+ρ] を固定する。この区間上で導関数の級数 ∑nan(x−c)n−1 は一様収束する。なぜなら(n が十分大きいとき)各項はやや大きい半径 ρ′∈(ρ,R) に由来する定数を用いて Mρn−1 で抑えられ、ワイエルシュトラスのM判定法が適用できるからである。
[c−ρ,c+ρ] 上での導関数級数の一様収束と、元の級数 ∑an(x−c)n の各点収束を合わせると、関数の級数を項別に微分する標準定理が使え、和 f(x) は [c−ρ,c+ρ] 上で微分可能であり、そこで f′(x) は導関数級数の和に等しい。ρ<R は任意だったので、これは (c−R, c+R) 全体で成り立つ。
大学実世界での応用と具体例
技術者や科学者が sin、cos、ex、 を手計算することはめったにない。電卓やコンピュータチップは(誤差を制御した)打ち切りべき級数を使ってこれらを計算する。物理学者は小角近似 sinx≈x−6x3 を使って振り子や振動子の方程式を線形化し、金融モデルでは短い時間刻みでの連続複利を近似するのに指数級数を用いる。
例: 端点が非対称な収束半径と収束区間
n=1∑∞n⋅4n(−1)n(x−2)n の収束半径と収束区間を求めよ。
解答
ここで c=2、an=n⋅4n(−1)n である。上の比判定法の定理より L=limn→∞anan+1=limn→∞4(n+1)n=41 なので R=4。
これにより級数が絶対収束する開区間 (−2,6) が得られる。端点では比判定法が判定不能なので、2つの端点を個別に確認する必要がある。
x=−2 のとき:(x−2)n=(−4)n なので、項は n⋅4n(−1)n(−4)n=n⋅4n(−1)n(−1)n4n=n1 となり、調和級数 n=1∑∞n1 となって発散する。
x=6 のとき:(x−2)n=4n なので、項は n⋅4n(−1)n⋅4n=n(−1)n となり、交代調和級数 n=1∑∞n(−1)n となって、交代級数判定法により収束する。
したがって収束区間は (−2, 6]:右は閉、左は開である。
例: 振り子補正のための cos(0.2) の推定
技術者が振り子の復元トルクをモデル化する際、cos(0.2)(ラジアン)を精度 10−6 で必要としている。cosx のマクローリン級数を x4 の項で打ち切って推定し、誤差を評価せよ。
解答
cosx のマクローリン級数は cosx=∑n=0∞(2n)!(−1)nx2n=1−2x2+24x4−⋯ であり、これは f(x)=n=0∑∞n!f(n)(c)(x−c)n で c=0 とした特別な場合である。
x=0.2 として x4 の項で打ち切ると:1−2(0.2)2+24(0.2)4=1−0.02+0.0000667≈0.980067。
cosx のマクローリン級数は x が小さいとき交代かつ項が減少するため、誤差は省略した最初の項で抑えられる:720(0.2)6≈8.9×10−8 であり、要求される 10−6 の許容誤差をはるかに下回る。
したがって技術者は超越的な余弦を直接計算する代わりに ≈0.980067 を安心して使える——これはまさに電卓の内部アルゴリズムが行っていることである。
L=limn→∞∣an+1/an∣=5 となるべき級数の収束半径はいくらか。
テイラー級数の公式 f(x)=n=0∑∞n!f(n)(c)(x−c)n は c における f に何を要求するか。
n=0∑∞an(x−c)n の収束半径が R のとき、導関数の級数 f′(x)=n=1∑∞nan(x−c)n−1 の収束半径はいくらか。
4次までのマクローリン打ち切りを使うと、技術者は cos(0.2) を誤差がどの量で抑えられて近似するか。