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解法: テイラー・ワイルズ法によるワイルズのモジュラー性証明(1994年)

ステップ 2/11: フライの着想:仮想的な解を楕円曲線に変える
ざっくり言うと

楕円曲線とは3次方程式 y2=x3+a2x2+a4x+a6y^2 = x^3 + a_2 x^2 + a_4 x + a_6 で表される滑らかな平面曲線であり、曲線上の2点を足し合わせる幾何学的な規則を備えている。曲線上の2点を通る直線を引き、曲線との3つ目の交点を求め、それを xx 軸に関して折り返すのである。この規則により曲線上の点は代数的な群をなす。

1984〜1985年、ゲルハルト・フライは大胆な着想を得た。もし反例 ap+bp=cpa^p + b^p = c^p が与えられたなら、3つの数 0,ap,−bp0, a^p, -b^p を右辺の3次式の3つの根として使えばよい。フェルマーの方程式に解があるなら、この特別な楕円曲線が Q\mathbb{Q} 上の幾何学的対象として実在しなければならない。

ap+bp=cp  ⟹  Ea,b,c:  y2=x(x−ap)(x+bp)a^p + b^p = c^p \implies E_{a,b,c}:\; y^2 = x(x - a^p)(x + b^p)
詳しい解説

Q\mathbb{Q} 上の楕円曲線 EE とは、右辺の3次式が相異なる3つの複素根を持つ3次方程式 y2=x3+a2x2+a4x+a6y^2 = x^3 + a_2 x^2 + a_4 x + a_6 (a2,a4,a6∈Qa_2, a_4, a_6 \in \mathbb{Q}) の有理数解 (x,y)(x, y) の全体に、弦と接線による加法則の単位元として働く無限遠点 O\mathcal{O} を付け加えたものである(Qiu et al. 2025, 3.3.1節, 定義3.1)。

背理法のため、素数 p≥5p \ge 5 と対ごとに互いに素な非零整数 a,b,ca, b, c に対して ap+bp=cpa^p + b^p = c^p がFLTの反例を与えると仮定する。イヴ・エルグアルシュ(1969年)の先駆的な構成に続き、ゲルハルト・フライ(1985/1986年)はこの仮想的な解に楕円曲線 Ea,b,c:y2=x(x−ap)(x+bp)E_{a,b,c}: y^2 = x(x - a^p)(x + b^p) を対応させた(Wiles 1995, 序文, p. 443 および p. 448; Qiu et al. 2025, 3.1.2節)。a,b,ca, b, c は非零であり ap+bp=cp≠0a^p + b^p = c^p \ne 0 だから、3つの根 r1=0r_1 = 0, r2=apr_2 = a^p, r3=−bpr_3 = -b^p はすべて異なり、Ea,b,cE_{a,b,c} は Q\mathbb{Q} 上の非特異な楕円曲線となる。

フライの洞察は、等式 ap+bp=cpa^p + b^p = c^p が Ea,b,cE_{a,b,c} の幾何学の中に埋め込まれているという点にあった。3つの根の差は ap−0=apa^p - 0 = a^p, 0−(−bp)=bp0 - (-b^p) = b^p, そして ap−(−bp)=ap+bp=cpa^p - (-b^p) = a^p + b^p = c^p となり、どれ一つとっても完全な pp 乗数になっている。次のステップでは、これがどれほど異常なことかを定量化する。

このステップの用語
Q\mathbb{Q} 上の楕円曲線
有理数係数を持ち重根のない3次方程式 y2=x3+a2x2+a4x+a6y^2 = x^3 + a_2 x^2 + a_4 x + a_6 と無限遠点 O\mathcal{O} で定義される滑らかな射影曲線。その上の点は弦と接線による加法のもとでアーベル群をなす。
フライ曲線(エルグアルシュ・フライ曲線)
フェルマーの仮想的な反例 ap+bp=cpa^p + b^p = c^p から作られる楕円曲線 Ea,b,c:y2=x(x−ap)(x+bp)E_{a,b,c}: y^2 = x(x - a^p)(x + b^p)。この曲線は反例が存在するとき、またそのときに限り存在する。
このステップで使う知識