ざっくり言うと楕円曲線 E 上の m 分点(ねじれ点) E[m]={Q∈E:mQ=O} とは、m 個足し合わせると単位元 O になる点のことである(時計の文字盤を m 等分する操作を独立な2方向で行うようなもので、Q 上に m2 個の点がある)。代数的数の任意の対称変換 Gal(Q/Q) はこれら m2 個の点の座標を線形に入れ替えるため、素数 p に対しては mod p の 2×2 行列として作用する。
楕円曲線 E がモジュラーであることを証明するため、ワイルズには足がかりが必要だった。すなわち、mod-p の影 ρE,p がすでにモジュラー形式に由来すると分かっている素数 p である。F3 上の 2×2 行列は小さな可解群(PGL2(F3)≅S4)をなすため、ロバート・ラングランズとジェロルド・タネルの深い定理によって、任意の既約な mod-3 表現 ρE,3 は自動的にモジュラーであることが保証される!
整数 m≥1 に対し、m 分点部分群 E[m]={Q∈E(Q):mQ=O} は (Z/mZ)2 に同型である(Qiu et al. 2025, 3.3.1節, 定義3.2)。素数 p に対して絶対ガロア群 Gal(Q/Q) は E[p]≅Fp2 に作用して mod-p ガロア表現 ρE,p:Gal(Q/Q)→GL2(Fp) を与え、さらにすべてのべき乗 E[pn]≅(Z/pnZ)2 にわたって整合的に作用して p 進ガロア表現 ρE,p:Gal(Q/Q)→GL2(Zp) を与える(Wiles 1995, p. 444; Qiu et al. 2025, 3.3.2節)。すべての素数 q∤Np に対して traceρE,p(Frobq)=aq(E) が成り立つため、E がモジュラーであることと ρE,p がモジュラー形式に由来することは同値である。
ワイルズが序文で説明しているように(Wiles 1995, p. 444–447 および p. 449)、1986年に数ヶ月間 2 進表現を調べた後の最初の 突破口は p=3 への切り替えであった。射影群 PGL2(F3) は可解群である対称群 S4 に同型であるため、八面体表現に対するアルティン予想に関するラングランズ(1980年)とタネル(1981年)の定理から、ρE,3 が既約であれば常に ρE,3 はモジュラーとなる(重さ 1 の形式から生じ、したがって重さ 2 の固有形式と合同になる)。
これにより、ワイルズは 3 進塔 Z/3Z←Z/32Z←⋯←Z3 の最下層における出発点を得た。ρE,3 が既約であれば、mod-3 の影がモジュラーであることは既知であり、あとは ρE,3 のすべての半安定な 3 進持ち上げ ρE,3 がモジュラーであり続けることを示せばよい(Wiles 1995, 定理0.2および定理0.3, p. 447)。では ρE,3 が可約であった場合はどうするか。そこでステップ8の 3–5 切り替えが必要になる。