解法: テイラー・ワイルズ法によるワイルズのモジュラー性証明(1994年)
もし楕円曲線 の mod- 表現 が可約であって、 でラングランズ・タネルの定理から帰納法を出発させられない場合はどうすればよいか。半安定曲線では と の両方が同時に退化することは起こらないため、 が使えないときには mod- 表現 が既約になる。
1993年5月、ワイルズは巧妙なリレー戦術(– 切り替え)を発見した。 とまったく同じ 分点の影 を共有しつつ、 分点の影 は既約になるような第2の半安定楕円曲線 を構成するのである。すると を経由して がモジュラーになり、したがって もモジュラーとなり、今度は で持ち上げ機械を動かして 自身がモジュラーであることを証明できる!
ワイルズが論文の序文および第5章で説明しているように(Wiles 1995, p. 444, p. 448, p. 452–453, および第5章)、半安定楕円曲線 は が可約( 上で可約な場合を含む)である可能性を除けば、 における持ち上げ定理の局所仮定を自動的に満たす。もし と の両方が可約であれば、 はモジュラー曲線 (または密接に関連する曲線)上の有理点を与えるが、 上の有理点の既知の分類により、そのような半安定曲線はすべてすでにモジュラーであることが分かっている。
が可約で が既約であるとき、ワイルズは 分点が と一致し、かつ 分点が指定された既約な像を持つ楕円曲線 をパラメータ化する捻れモジュラー曲線 を考察する。このモジュライ曲線は種数 で有理点を持つため、ヒルベルトの既約性定理によって でありながら が既約となる半安定楕円曲線 が構成できる(Wiles 1995, p. 448 および第5章)。
のモジュラー性持ち上げ定理(定理0.3)を に適用すると、 がモジュラーであることが証明される。 がモジュラーなのでその mod- 表現 はモジュラー形式に由来し、 であるから の mod- 表現もモジュラーであると判明する! こうしてワイルズは今度は でモジュラー性持ち上げ定理をもう一度適用し、 がモジュラーであると結論できるのである(Wiles 1995, 定理0.4, p. 448)。
- 既約表現と可約表現
- 2次元ガロア表現において、すべてのガロア対称変換で不変に保たれる 内の1次元直線が存在するとき(適切な基底で全行列が上三角になるとき)可約といい、そのような不変直線が存在しないとき既約という。
- – 切り替え
- mod- 表現が可約である半安定曲線 を、同じ mod- 表現 を共有しつつ既約な mod- 表現を持つ別の半安定曲線 に置き換えるワイルズの1993年5月の手法(Wiles 1995, 第5章)。